林梨絵

一人ひとり違う相談者さまの思いを誠実に受け止めたい一人ひとり違う相談者さまの思いを誠実に受け止めたい
福祉村病院医療ソーシャルワーカー
はやし・りえ

林梨絵

医療ソーシャルワーカーという職業をご存じですか? 医療ソーシャルワーカーとは、病気や障がいを抱える方がその人らしく療養できるようサポートする専門職。福祉村病院では現在、5名の医療ソーシャルワーカーが活躍しており、今回取材した林梨絵さんはその一人。はじめは、さわらび会に介護士として入職された林さんでしたが、産休・育休を2回とるかたわら複数の資格を取得。2015年より医療ソーシャルワーカーとして働いています。

まずは、医療ソーシャルワーカーを目指した理由を教えていただけますか。

はじめは介護士として入職しましたが、いつしか「もっといろいろな分野の人と関わる仕事をしたい」と思うようになりました。介護士の仕事もとても充実していましたが、ご利用者様と1対1で向き合うので、医療ソーシャルワーカーとは人との関わり合いが少し違うんです。

それともう1つ、ある利用者様との出会いも、私に大きな気づきを与えてくれました。 特別養護老人ホーム「さわらび荘」で介護士をしていたときの話です。あるお年寄りの女性が入所されました。その方は息子さんと2人暮らしをされていたのですが、息子さんが亡くなられたため、急遽、入所が決まったのです。入所に際して親戚の方からは、女性は耳が遠く、片方の目の視力がなく、認知症を患っていると伺っていました。さらに、意思の疎通はできず何をするかわからない、立って歩くのも難しい、という話でした。

確かに、はじめのうちはコミュニケーションをなかなかとれませんでした。ところが、ケアをさせていただくうちに、こちらが大きい声で話せばちゃんと理解してくださることが判明したんです。さらに、洗い物や編み物といった主婦業も得意だとわかりました。そのとき思ったんです。「認知症患者さんはたくさんの引き出しを持っている。ただ、それが病気で隠れてしまっているだけなんだ」と。同時に、「隠れている引き出しを見つけて、それを開けられるかどうかは、ケアする私たちの技量にかかっているんだ」と痛感しました。以来、介護や福祉についてもっと深く学びたいと思うようになりました。

患者さんの希望や悩みを医療スタッフに伝える林さん。「患者さん本位の診療を実現するためには情報の共有が欠かせません」。

仕事をするうえで大切にしていることはありますか?

ご相談内容をフィルターをかけずに聞く、ということでしょうか。医療ソーシャルワーカーも人ですから、当然、主観はあります。でも、自分の主観で相談内容やその方がどんな方かを判断するべきではありません。なぜなら、すべての人に主観があり、価値観や考え方は人それぞれ違うからです。ですから、話を伺う際にはまず、何のフィルターもかけずにただ聞く。どうしたらよいのか、どんな選択肢があるのかを考えるのはその後。これがけっこう難しいのですが、患者さんやご家族本位の療養を実現するためにはとても大切なんです。また、「外来で困っている人がいたら相談にのってさしあげなさい」という山本孝之理事長の教えを、日頃から実践するよう心がけています。

仕事のやりがいは?

私にとって仕事は、気づきや生きるヒントをいただけるものです。ですから、患者さんやそのご家族、医師、看護師、公的機関の関係者など、いろいろな方に出会ってやりとりできるのが、この仕事の一番の魅力だと感じています。たくさんの人に会い、それぞれの価値観や考えに接しながら医療ソーシャルワーカーとしての役目をきちんと果たすのは、正直、大変なときもあります。でもそれ以上に、仕事を通じて「いろんな方がいていいんだ」「いろいろな考え方があっていいんだ」と気づけることがうれしいですね。

医療ソーシャルワーカーとはどんなお仕事なのでしょうか。

ご自身、またはご家族が病気やケガをされると、さまざまな悩みが生じますよね。「家族が急に認知症になってしまったけれど、自宅でのケアは難しい。どうしたらいい?」「退院後にどう療養を続けたらいいかわからない」といった悩みに耳を傾けて、解決や調整に向けて社会福祉の立場からサポートする。それが私たち医療ソーシャルワーカーの仕事です。

また、医師や看護師には話しにくい、もしくは、聞きにくい話もあると思います。そんな思いを受け取り、病棟に還元していくのも私たちの役目。医療ソーシャルワーカーは、患者様、ご家族、医療機関、各種医療・福祉制度の「つなぎ目」だと思っています。

患者さんのリハビリ計画について意見交換することも。勤務中は、診察室、リハビリ室、病室など、病院内のあらゆる場所を行き来します。
林梨絵(はやし・りえ)1979年7月25日生まれ。愛知県豊田市出身。プライベートでは2児の母で、育児と仕事を両立している。「仕事の休憩中、子どもの顔を見に行ける距離に福祉村保育園(事業内保育施設)があったのでよかったです。安心して働けました」(林さん)
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