石田敏郎

石田敏郎

職員としてやりがいを感じるのはどんなときですか?
「若菜荘」は、入居者のみなさんにとっては“生活する場所”です。入居者のみなさんには、若菜荘という生活の場で、日々をより快適に、楽しく過ごしてほしいと願っていますし、それを実現するのが私たち職員の役目だと思っています。ですから、入居者さんがリハビリを頑張って何かできるようになったとか、体調が良くなられたとか、そういった何かを達成されたときももちろん喜ばしいのですが、それ以上に、外出や交流会といったふだんの暮らしの中で、入居者の方に「若菜荘にきてよかった」「若菜荘での暮らしは楽しい」と感じてもらえたら、それが一番嬉しいんです。実際にそういう声を聞けたときは本当にやりがいを感じます。

お子さんは全員、福祉村保育園に通われていると伺いました。
そうなんです。7歳の長女は今年、福祉村保育園を卒業しましたが、次女と三女は今も通っています。福祉村保育園のすばらしいところは、「誰にでも個性があるし、個性があっていいんだ」ということ。そして、「困っている人には手を差し伸べる」ということを、実体験として学べる点だと思うんです。
幼い子どもでもいじめや差別がある時代です。「人と違う個性」を持っている人は、いじめや差別の対象になってしまうことがあります。ところが、福祉村保育園にいると、「誰にでも個性があるし、個性があっていいんだ」と自然に思えるようになるんです。いろいろな福祉施設がさわらびグループにはありますから。
「困っている人がいたら助けてあげましょう」というマナーも、ただ言って聞かせるだけではなかなか身につきませんよね。こうしたマナーは、実際に助けている大人の姿を見て、そこから学んでいくものだと思います。福祉村ではそうした光景が当たり前のようにあるんです。これもまた、福祉村の特徴といえるかもしれませんね。
「みんなの力でみんなの幸せを」という理念について、石田さんはどのようにお考えですか?
学生時代、中国のタクラマカン砂漠で砂漠の民とともに過ごす機会がありました。そのとき、「幸せとは何か」と思ったんです。日本のような消費社会でいうところの「幸せ」と、人に必要な「幸せ」は違うのではないか? そんなことを漠然と考えるようになりました。
その翌年から縁あってさわらびグループで働くようになり、今年で勤続12年になります。これまで、利用者さまからたくさんのことを教えていただきました。「みんなの力でみんなの幸せを」という理念にも出会いました。いまだに、さわらびグループの理念を完全に理解しているとはいえません。砂漠で抱いた「幸せとは何か」という問いへのはっきりとした答えも見つかっていません。それでも、福祉村で働くなかで、幸せについての理解が少しずつ深まっていることに、大きな喜びを感じています。
山本孝之理事長が1973年から提唱している認知症介護の三原則もすばらしい教えです。私はこの「三原則」とは、“人と人がともに暮らすための大切なルール”だと思っています。「一、いつも暖かい愛情と笑顔で」「二、決して叱らず、制止せず」「三、今、できることをしていただく」。この三原則を、高齢者支援だけでなく、障がい者支援にも、さらには子育てにも応用させていただいています。
石田さんが考える福祉村の特徴とは?
いろいろありますが、自治会活動はその1つだと思います。福祉村の入所施設の多くは、ご利用者様で構成される自治会を設けていて、自治会が施設の運営の一端を担っているんですよ。
介護や福祉の現場で仕事をしていると、疑問に思うときがあるんです。「介護・福祉に関する制度や取り組みは、現場をよく知っている人や、介護・福祉をされる当人たちの意見をきちんと汲んだ上で決定されているのだろうか?」と。障がいを持っている方も、認知症の方も、できること・できないこと、得意・不得意は一人一人違います。だったら、ルールを決めるにしても、何らかの取り組みを始めるにしても、まずは、ご本人たちの声に耳を傾けて、それから決めるべきではないでしょうか。けれど、現実は必ずしもそうなってはいません。
その点、若菜荘をはじめとする福祉村内の施設には自治会があります。おかげでご利用者様の意見や希望が私たち職員に届きやすく、風通しのいい場所になっていると思います。
